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育児日記 ~食物アレルギーとともに

食物アレルギーとともに

 

瀬戸こども園 園長 高橋由美子

                                                                                                                     2012年7月
 

 私事で大変恐縮ですが、2番目の息子はとても重症の食物アレルギーを抱えて産まれてきました。
アレルギーの始まりは、生後2週間目の顔の湿疹からです。最初は、乳児湿疹だからやがておさまるだろうと
大して気にもしていませんでした。湿疹は日が経つうちに顔から胸、腹部へとどんどん広がっていきました。
その頃になってこれはおかしいと思い、病院を受診。そこで、いろいろ検査をした結果、冒頭のような診断名が
下りました。今から20年くらい前の話です。今のように食物アレルギーは、広く一般的には知られておらず、
栄養のある食材を食べて湿疹が出るなど考えられないことでした。
 
 
 当時は母乳だったので、母親である私が除去食をすることになりました。最初は牛乳、卵。それでも湿疹がおさまらず、大豆、小麦と除去しましたが全く変化なし。更にジャガイモ、かぼちゃ、牛肉、豚肉、鶏肉と範囲が広がり、それでもよくならないので、微量しか含まれていない食品(例えば、醤油・かまぼこなど)もすべて除去。米もダメになり、その頃の私の主食はさつま芋。米は毎日食べても飽きませんが、さつま芋は最後には食べるのが苦痛になり、食べても何だかお腹が満たされません。家族が炊きたてのご飯を残すのを見た時は「なんて、もったいないことを」と改めてご飯のありがたさを感じたものです。私はと言えば、見る見るうちに痩せて体力も落ちてきたので、医師と相談し母乳からミルクに変更することにしました。
 
  食物アレルギーはタンパク質が影響しているので、タンパク質を分解してあるミルクを飲むことになりました。
 
最終的には、アミノ酸まで分解してあるミルクになり、小さな缶が4千円弱していたと思います。最高にミルクを
飲む時は1か月ミルク代に4万円くらいかかっていました。ミルクの間はそれで栄養が摂れるので安心ですが、離
乳食がまた、難関でした。穀物がダメなので、野菜から始めたのですが、人参などの緑黄色野菜には反応してしま
います。唯一ピーマンだけは大丈夫だったので、ピーマンのペーストから始めました。こんな苦いものをわが子は
おいしそうに食べます。そうか人間というのは最初は味がわからないので、どんな味のものでも食べるのだという
ことがわかり、あえて苦いものや酸っぱいものを与えることにしました。

 

 食事療法と同時に気を付けたのは、皮膚の保湿です。なかなかかゆみがとれず、湿疹も日によってひどくなっ
たり良くなったりと症状が目まぐるしく変わります。夜はかゆみで眠れないのか常にぐずぐず泣くので、背中を
とんとん叩きながらこちらも熟睡できない日が3歳近くまで続きました。皮膚症状は本人の免疫力が落ちるとと
たんに悪化するので、風邪などひいた時は良くならなくても気にしないようにしました。地道に毎日清潔にして
刺激物のないローション等で保湿することを繰り返しました。もちろん皮膚から分泌物が出るような時は薬にも
頼らざるを得ません。医師からは、一生卵と牛乳は食べられないだろうと言われました。
 
 絶対に何でも食べられる体に育てようと決心し、手当り次第にアレルギーに関する本や水、食物の本をを読みました。そこで得た結論は、少しずつ原因になっている食物を食べないと本当に一生食べられないことになりそうだということです。そこで、1歳3か月くらいの免疫ホルモンが出るころで、体調の良い時にこれまで食べられなかった食材を少しずつ食べさせてみることにしました。スプーン1杯の量を増やしたり減らしたりしながら、皮膚症状とにらめっこ。食事日誌もつけることで、食材によって反応が3日後に出るものや、かゆみだけ出るものなどいろいろあることがわかりました。自己流の食事療法でしたが、確実に食べられるものが増えていき、皮膚症状もどんどん良くなっていきました。主食も米と低アレルゲン米のブレンドの割合を少しずつ変えながら、1年かけて何とか米だけのご飯を食べられるようになりました。
 
 当時の保育所では、アレルギー食などはありませんから、すべて家で作ったものをランチジャーに入れて持って
行っていました。その頃おやつとしてよく食べていたのは、リンゴのスライスの乾燥させたものやアマランス粉
のクッキーです。まだ、アレルギー食品がなかなか手に入らない時代だったので、本当に貴重なものでした。そう
言えばマヨネーズも油や卵を使えないので、手作りしていました。パンも食べさせてやりたくてまだ、小麦粉が
使えなかったので、いろいろな粉で焼いてみましたがどれも硬くて食べられる代物ではありません。本当に今は
アレルギー用のおいしいパンがいっぱいあっていい時代になったものです。
 
 こうして食事には悪戦苦闘しましたが、子育てはとにかく普通に伸び伸びとをモットーに悪いことをしたら容赦
なく叱り、日頃はいつも抱きしめて「かわいい」と言いながら育てました。息子はすくすくと元気に育ち、3歳の
時に麻疹にかかって以来、熱を出したこともなく、小・中・高校と1日も病気欠席はありません。体育の時間に冬で
も半袖を着るので、学校の先生が寒そうに見えるから長袖を来て欲しいと言われたくらいです。
 
 食事療法をしていた幼い時に、上の娘も市販のお菓子を食べなかったのですが、アレルギー用のお菓子を「おいしいね」と言って喜んで食べてくれたのには感謝です。その頃娘は小学生だったので、きっといろいろ食べたかったのだろうと思います。
 
 こども園の子どもたちが安全に離乳食をとることができ、免疫力の強い体をつくれるようにと、瀬戸こども園ではアレルギーの有無にかかわらず食材の進め方を工夫しています。意外に穀物はアレルゲンであることが多いので、離乳食の早期には食べないようにしています。まずは野菜から。特に淡色野菜の方が安全なので、淡色野菜から
緑黄色野菜、そしてタンパク質へとゆっくり進めています。野菜から始めた子どもは、苦みを普通に経験するの
で野菜嫌いになりません。ぜひ、皆さんもご家庭で試してみてくださいね。

 子育てにはいろいろな悩みが尽きませんが、今は子育て支援をしている場所がたくさんあります。
そんな所をうまく利用して乗り切ってください。もちろん「ひまわりっこ」もよろしく!!